私らしい備前焼の始まり

こんにちは。備前焼作家の吉岡亜子です。

「備前焼をもっとかわいく、もっと身近に!」をコンセプトに作品づくりをしています。

今日は、もともと備前焼の窯元で陶工として働いていた私が、どのようにして“私らしい作品づくり”をするようになったのか、その始まりについてお話ししたいと思います。

実は、備前焼の窯元に就職した当初、私は備前焼そのものにほとんど興味がありませんでした。

もともとピンクや水色など、色味のある可愛らしいものが好きだった私は、備前焼の「素朴で重厚で、男性的」な雰囲気にあまり魅力を感じていなかったんです。

でも、「備前焼の窯元に就職した以上、ここで自分にできることをしよう」と思って、改めて備前焼をよく見てみたところ…

“ただの茶色”にしか見えていなかった備前焼の中に、実はたくさんの「色」があることに気づきました。

茶色、紫、赤、グレー、黄、金、緑、肌色、朱色、青、黒…。

同じ土から作られた器でも、焼成中の窯の中で起きるさまざまな変化によって、こんなにも多彩な色が生まれる——

そのことを、初めて知ったのです。

私が大学で学んでいた焼き物では、もし色を付けるとしたら、

1.土自体の種類による違い
2.釉薬で色をつける
3.下絵の具や上絵の具、化粧土などで色を変える

といった方法が主流でした。

でも備前焼は、基本的に、

1.土は同じ(※)
2.釉薬や絵具などは一切使わない

という、今までやってきた焼き物とは真反対の定義なのです。
(※正確にいうと、備前焼の中にも色んな種類の土はありますが、ここでは大まかな定義として書いています)

もちろん、備前焼に釉薬を付けれないわけでもないし、備前土に色粉を混ぜて土自体の色を変えることは出来ます。

けれど私は、「備前本来の色味を使いながら、どう“可愛く”するか」にこだわりたくなりました。

釉薬をかけてしまえば、他の焼き物と同じになってしまう。
そうではなく、備前焼ならではの渋い色合いのなかに、「可愛さ」を感じてもらえる。

そんなギャップが面白いし、そこに挑戦してみたいと思ったんです。

備前焼の定義から外れることなく、それでいて“なにか新しい”。

そんなものが生み出せたら、それは「ルールがある中でも、工夫次第で自由な表現ができる」ということ。

私は昔から、奇抜じゃないけれど、どこか特別感のあるもの。

普通なのに、個性があるものに惹かれてきました。

ーーーその感覚を作品づくりに活かせないか?

その想いが、今の作品づくりの原点になっています。

そうして最初に生まれたのが、

「備前焼アクセサリー」でした。

実は昔から、備前焼のアクセサリーは世の中にあったのですが、
パーツも大きく、いかにも、「一般的な備前焼の雰囲気そのもの」なアクセサリーが多く、
私が思う“かわいさ”とは少し違っていたんです。

(※もちろんそれが悪いというわけではなく、あくまで好みの問題です。私は、ただ「かわいいもの」が好きなんです^^)

私が目指したのは、シンプルな服にも、ちょっとしたドレスアップにも似合うような、

華奢で繊細で、女性の首もとをそっと引き立ててくれるようなアクセサリーでした。

そこで、どんなに小さなパーツもすべて粘土から手作業でつくり、

色を釉薬で“つける”のではなく、窯の中の変化や藁の当て方、灰のかかり方といった工夫によって、備前焼の持つ自然な色味を引き出していく。

そうすることで、それぞれ異なる表情を持つ、繊細でかわいらしいアクセサリーが誕生しました。

一見して備前焼とは気づかれないこともあります。

けれど、宝石やガラス、木とも違う、どこかあたたかくて独特な雰囲気をまとったアクセサリーです。

さりげなく可愛さを引き出してくれる、自慢の作品たち。

ぜひ一度手に取って、その魅力を感じていただけたら嬉しいです♡

アクセサリー作品はこちらからご覧頂けます♪

次回は、その他、キャンドルホルダーや透かし花入れなどのアイテムについてお話し致します^^

この記事を書いた人

吉岡亜子

備前焼作家。備前焼の窯元で陶工として8年間勤めたのち、「備前焼をもっとかわいく、もっと身近に!」をコンセプトに独立。
女性ならではの感性で、手にした時使いやすく、見た目も可愛い備前焼を提案。
現在は備前焼の体験教室の講師も務める。